しかしこの技術が完成されるまでには多くの問題を解決せねばならなかった。
カーブしたスクリーンだとどうしてもピンボケを起こしてしまう部分がでてくる。まず映写機のレンズは焦点の深いレンズにしなければならない。そしてスクリーンに映写される光線の乱反射によって生じる画面のボケや歪みを防ぐ為に「すだれ式スクリーン」を考案した。
一見普通の1枚のスクリーンだが、実は1600本もの垂直にはられたテープから成り立っている。そしてそれぞれのテープの角度は微妙に調整されているのである。
標準のシネラマスクリーンは横75フィート、高さ26フィートで、それに映像を投射する3台の映写機には焦点距離27ミリのレンズが使われ、互いに48度の角度をなすようにされている。中央は正面を、左のレンズは右画面、右のレンズは左画面を受け持つのである。
3台の映写機は完全にシンクロされ、各フィルムが重なり合う個所をボカす装置までついている。映写機のアパーチャーの横に小さなクモの巣状の鉄のマスクをはめ、高速に上下振動させて画面の繋ぎ目を目立たなくしている。
音響装置も素晴らしく、なんと7本のサウンドトラックが使われていた。うち5本は直接スクリーン後方の5個のスピーカーに通じ、6本目は観客席の両側、背後のスピーカーを鳴らす。7本目はコントロール用で、スピーカーからスピーカーへの音の移動を自動的に行う役目をはたす。
そしてその11年後、遂に技術者達は1台のカメラで撮影し1台の映写機で上映できるシネラマシステムの開発に成功するのである。
そのためには数々の技術的な改良がなされた。まずあれだけ大きなスクリーンにまんべんなく鮮明な画像を投影するだけの大きな光源を備えた映写機を開発しなければならなかった。もちろんそのためにはフィルムやレンズをいためないように相当に冷却のきく光源を開発する事も含まれていた。
湾曲したスクリーン全体に鮮明な画像を映写するには葯メートルにも及ぶ焦点深度のレンズを開発せねばならなかった。当時としては相当に複雑な問題だった。さらに適度な鮮明さ、色バランス、その他新方式に伴う基本的諸条件を満たすフィルムの開発がイーストマンフィルム社の尽力により成功した。そしてもちろんそんな映像を撮れるカメラの開発も研究開発された。
そんな血のにじむような努力の結果、つなぎめのないシネラマ映画を見ることができるようになったのである。
初期シネラマ作品 | ||
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これがシネラマだ | ポスター | パンフレット |
シネラマ・ホリデイ | パンフレットA、B | |
世界の七不思議 | ポスター | パンフレットA、B |
世界の楽園 | パンフレット | |
大西洋2万哩 | パンフレット | |
シネラマ劇映画第一作 | ||
西部開拓史 | パンフレット | |
シネラマ劇映画 | ||
チップス先生さようなら | ポスター | |
宇宙からの脱出 | ポスター | |
暁の出撃 | ポスター | |
アルフレッド大王 | ポスター | |
一元式シネラマ作品 | ||
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不思議な世界の物語 | パンフレット | |
その他 | ||
シネラマ祭り | パンフレット |
シネマスコープ第一回作品 | 聖衣 |
シネマスコープ長篇ドキュメンタリー第一回作品 | 失われた大陸 |
スーパーテクニラマ第一作 | ソロモンとシバの女王 |
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クレオパトラ | ||
西部開拓史 | ||
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